三重県名張市に、明治45年の創業以来、110年以上にわたり瓦づくり一筋で歩んできた有限会社岩見瓦製作所。日本瓦の製造から屋根施工までを一貫して手がけ、地域の住まいを支えてきました。
しかし、和瓦を取り巻く市場環境は年々変化しており、事業を次代へつないでいくためには、新たな取り組みが求められていました。
同社では、寺社仏閣などの重要文化財を支える高度な専門分野へと舵を切り、4代目社長のもと、専門家の助言を受けながら、内製化率の最大化と技術継承を軸とした現場改革を行いました。
相談をしたキッカケや背景を教えてください。

明治から続く歴史の重みを背負い、私は4代目として「製造から施工までの一貫体制」を最大の強みに掲げ、日本瓦製造・屋根瓦工事業者として長年経営してきました。しかし、1995年の阪神・淡路大震災以降、スレート瓦の普及や太陽光発電の設置増加などにより、和瓦の需要は大幅に減少していきました。
そうした中でも、寺社仏閣などの重要文化財における瓦屋根分野へ参入し、少しずつ実績を積み重ねてきました。そして数年前、小ロット生産が可能な新しい窯を導入するという、大きな決断をしました。
ところが、当初思い描いていたようには設備の稼働率が上がりませんでした。製造部門も施工部門も、皆が一生懸命取り組んでくれている。それなのになぜ成果につながらないのか。どうすれば生産設備の稼働率を高め、収益を拡大できるのか――。私は常に答えを模索していました。そのような折、取引金融機関の担当者から、みえビズの支援制度の紹介を受け、相談をお願いすることにしました。
どのような助言を受けましたか?

専門家には工場を視察していただき、現場の声を丁寧に拾い上げてもらいました。その中で浮かび上がったのが、部門ごとの情報共有のあり方でした。
瓦の製造部門と施工部門は、それぞれ責任を持って業務にあたっていましたが、受注情報や製造計画が十分にすり合わされておらず、本来自社で製造できる瓦でも、結果として外部調達を選択してしまう場面があることを指摘されました。
「収益改善と若手育成を同時に進めていくためには、瓦製造において内製化率の最大化を目指すことが重要です。そのためにも、部門間での情報共有をより円滑にし、先を見据えて判断できる仕組みづくりが欠かせません。」そうした助言を受け、これまで経験や感覚に頼っていた部分を整理し、誰が見ても分かる形で情報を共有できる体制づくりに取り組むことになりました。
改善提案を受けて何をしましたか?

改善提案を受けて、まず着手したのは、営業・製造・施工の各部門が参加する定期ミーティングの新設でした。「生産計画表」を共通のツールとして活用し、数か月先までの受注状況や製造の段取りを共有することで、製造の余力や課題が可視化されていきました。
その中で改めて整理したのが、瓦の種類ごとの製造体制です。当社では以前から、寺社仏閣向けの特殊瓦・役瓦は内製しており、これは現在も変わらない大きな強みです。一方で、一般的な形状で外部調達が可能な平瓦については、外注に頼る体制となっていました。専門家からは、「特殊瓦の内製という強みを守り、さらに高めていくためにも、瓦製造全体で内製化率の最大化を目指す視点が重要」という助言を受けました。
そこで、無理に生産量を増やすのではなく、生産計画表をもとに余力のある時期を見極めながら、平瓦の内製化を段階的に進めることにしました。平瓦は工程が比較的シンプルで、若手職人が基本技術を身につけるのにも適しており、窯の稼働率向上にもつながります。
その結果、平瓦を内製で安定的に生産できるようになり、製造全体の流れが整いました。それによって、特殊瓦についても無理のない工程管理が可能となり、これまで以上に品質を重視したものづくりに時間をかけられる体制が整ったと感じています。
支援を受けてどのように変わりましたか?

支援を受けて以降、部門間の連携は格段に深まりました。以前のように各部門がそれぞれの立場で判断するのではなく、会社全体の流れを意識しながら、自然に助け合う意識が根付いてきたと感じています。
内製化が進んだことで収益性が改善したことはもちろんですが、それ以上に大きな成果は、若手職人の成長です。平瓦の内製化により実践の場が増え、基礎技術を繰り返し磨けるようになったことで、その経験が特殊瓦づくりにも確実に生きています。
伝統を守るということは、決して変わらないことではありません。強みを活かすために体制を進化させ、技術を次の世代へつないでいく。今回の取り組みを通じて、その大切さを改めて実感しました。今後も「岩見の瓦」を未来へ残していけるよう、挑戦を続けていきたいと考えています。
行動計画
生産計画の作成運用により、瓦の増産に取り組む
作業工程の見直し- 《内製化率の向上》
- 外部から調達している瓦の購入品について、内製化をおこなう
- 具体的には、次回見積案件より営業・製造で内製検討を開始する
- 加えて生産数量が増加することで若手従業員育成の機会を創出する












