「セントラルゴム」は、防振ゴムやストッパーゴムといった工業用ゴム製品を製造する小さな町工場。近年、原料費や電気代の高騰により収益性が悪化し、価格転嫁を試みるも交渉が思うように進まず、厳しい状況に直面していました。
この苦境を打破するため、経営改善コーディネーターと製造業に強い専門家に相談し、原価管理や価格交渉の改善に取り組み、収益力の向上を目指しました。
どのような相談をしましたか?
昔に比べて原料費や電気代が高くなり、収益性が年々低下していることに頭を悩ませていました。特に長年同じ単価で取引していた商品について、価格を見直さなければならないという意識は持っていましたが、実際にどう進めていけばよいのかがわからず困っていたました。また、3次下請けや4次下請けという立場もあって、価格転嫁が難しい現実がありました。
2024年は世間全体で値上げの流れがあり、改めて価格転嫁にチャレンジするに適したタイミングだとも思い、このような苦境を打破することができるのか、どのように価格交渉を進めていけばよいのか、専門家の先生に相談しました。
どのような助言を受けましたか?
まず、商品ごとの採算性を正確に把握するために、材料費、外注費、電力費、労務費、設備償却費、販管費の6項目に分けて原価を計算するよう助言を受けました。家族経営であっても、自分たちの労務費を正確に算出し、それを原価に含めることが重要であると指摘されました。個別原価計算を行うことで、単に「値上げをお願いする」のではなく、具体的なデータをもとにした交渉ができるようになるため、これが収益改善の基盤となることを教えていただきました。
取引先にとって「値上げ=悪」という固定観念を持つのではなく、値上げを通じて納期管理の強化や品質向上、新規投資による技術力や生産性の向上など、取引先にとってもメリットがある点をしっかり伝えることが重要であると教えられ、大きな気づきを得ました。
また、下請け仕事だけに依存するのではなく、自社独自の商品であるゴム製の手裏剣キーホルダーを積極的に販売していくべきとの助言を受けました。これまで手探りで進めてきた自社商品の開発・販売に対して、「その方向性は間違っていない」という自信をいただくことができました。
改善提案を受けて何をしましたか?
専門家の指導を受けながら、個別原価計算を実施し、代表的な商品について原価管理シートに入力しました。材料費や外注費、電力費、労務費、設備償却費、販管費の6項目で製品原価を把握した結果、収益性が低い製品や取引先が明らかになりました。
これを基に、収益性の低い商品については値上げの価格交渉を、収益性が見合っている商品や取引先については取引数量の拡大を目指した営業活動を模索するなどの対策を考え、具体的に動き始めました。
さらに、コロナ禍で大きく売上が落ち込んだ自社商品の拡販活動も再度、力を入れることにしました。外国人観光客をターゲットに、東京や大阪、京都などで営業を強化するため、パッケージを英語表記を追加するなどの準備を進めています。
支援を受けてどのように変わりましたか?
これまで漠然としていた原価管理や利益構造の理解が、より具体的で明確なものとなりました。「どうせ価格転嫁は無理だ」と諦めて行動すらしていませんでしたが、今回の支援を受けて値上げ交渉や原価計算に対する意識も大きく変わり、行動意欲も湧いてきました。
また、取引数量の拡大に向けた営業活動の重要性を再認識し、下請け仕事だけに頼らず、自社商品であるゴム手裏剣の販売に本腰を入れるようになりました。結果として、利益を確保するために何をすべきかが具体化し、行動への意識も大きく変化しました。
み・エールbizのサポートがなければ、ここまでの変化は実現しなかったと思います。親身になって相談に乗ってくれたコーディネーターや専門家の先生方には大変感謝しています。
行動計画
個別原価計算の導入による、製品ごとの採算性把握
管理会計の導入・改善- 原価管理シートに入力し、品番毎の売上・利益を把握する。過去の出荷数を基に、今年度の出荷数を算出し収益予測も行う。
具体的なデータを提示し、価格交渉の実施
価格転嫁- 単に「お願いする」のではなく、商品ごとの採算性を正確に把握し、具体的なデータを提示しながら話を進める。
自社商品の営業強化
新商品開発- 外国人観光客をターゲットに、東京や大阪、京都などで営業を強化するため、パッケージを英語表記に追加する。