宿泊客のデータ分析と旅館の魅力発信で、集客力向上を図る

木曽岬町にある「庄助」は1983年に創業した料理旅館で、未経産のメスのイノシシ肉を使った「しし鍋」などの名物料理や、源泉100％掛け流し(加水による温度調整なし)の良質な温泉を売りとしています。
県内外から多数の宿泊客の利用があり、新型コロナの感染拡大を受けて利用が減少し、コロナ禍収束後も伸び悩んでいることが課題となっていました。
そこで、経営改善コーディネーターによる助言のもと、宿泊客の実績データの活用と情報発信を軸とした集客力向上に取り組みました。

どのような相談をしましたか？

私たちの旅館は、県内でも有数のレジャー施設が周辺にあるなど立地面での条件にも恵まれ、従来は多数の観光客が訪れていました。しかし、新型コロナ感染症の流行による観光需要減少の影響は甚大で、コロナ禍の収束後も客足が思うように戻らずに苦慮していました。これまで顧客へのアプローチの手段は、オンラインの旅行代理店が運営する宿泊予約サイト経由がメインでした。しかし、収益を回復させていくためには従来のやり方にとらわれない方法で集客力を高めていく必要があります。そこで、経営改善コーディネーターの派遣を依頼し、新規顧客の開拓やリピーターの獲得に向けてどのような取り組みをすべきか、アドバイスを受けることに決めました。

どのような助⾔を受けましたか？

専門家とともに問題点を整理したところ、これまで集客のルートを宿泊予約サイトに依存していたため、旅館側からの情報発信が不十分な点が課題に挙がりました。また、宿泊予約サイトを運営する旅行代理店からは宿泊客のデータや口コミなどが提供されますが、それをうまく集客に生かせていないことも指摘されました。そこで、以下のような助言を受けました。

提案1：宿泊客のデータを分析・活用し、顧客満足度向上のヒントを探ること。
提案2：従業員や関係者で経営課題を共有し、解決策について意見交換の場を設けること。
提案3：20～30代の顧客をターゲットにした情報発信を強化すること。

改善提案を受けて何をしましたか？

しし鍋などの名物料理や天然温泉が私たちの強みですが、その魅力を旅館としてうまくPRできていないのが現状でした。効果的に情報を発信して他との差別化につなげるために、まずはアピールするターゲット層を明確化する必要があります。旅行代理店からフィードバックされたデータを分析すると、20～30代の顧客層に開拓余地があることが分かったため、若い世代が多く利用するSNSなども活用してアピールを強化していく方針を決めました。SNSで発信する内容をはじめ、集客力向上に向けたアイデアは、従業員とも意見交換しながら検討しています。さらに、多角的な意見を取り入れるため、旅館の伴走支援を担当する銀行員にも議論に加わってもらうことにしました。

⽀援を受けていかがでしたか？

専門家から特に強調して助言されたのが、経営改善に向けて関係者一丸となって議論する重要性です。これまで、旅館の運営方針や課題への対応は経営者である私が一人で検討しがちでした。支援を受けたのを機に関係者全体で課題を共有し、その解決に向けて話し合う機会を設けるようにしています。旅行代理店からの還元データも定期的に確認し、集客力や顧客満足度を高めるための検討材料として活用しています。今後は、このようなデータに基づいて改善策を考える習慣も定着させていきたいと考えています。支援を受ける中で、これまでになかった視点からの提案を受けられたことは非常に新鮮で有意義な経験でした。アドバイスを生かし、当旅館の魅力をさらに多くの顧客に広められるように努めていきます。