九州で研鑽を積んだ確かな腕を持つ熟練の職人が営む、割烹居酒屋「食彩南風」。創業から7年が経ち、地域に根付き始めた一方で、店を構える尾鷲市では人口減少という地方特有の重い課題が、静かに、しかし確実に影を落としていました。
職人としての誇りを胸に、日々料理と向き合いながらも、経営者としての将来への不安は募るばかり。現状を打破したい――その思いから、店主はみえビズの支援を受け、経営改善に乗り出しました。
相談をしたキッカケや背景を教えてください。

創業以来、私の料理を愛してくださる常連のお客様に支えられ、少しずつ地域に必要とされる店へと成長してきました。しかし、尾鷲市の人口減少は深刻で、既存のお客様だけに頼る経営には限界があると感じるようになっていました。
さらに近年の急激な物価高騰により、仕入れ原価は上昇。「手頃で美味しい」という価値を守り続けるためには、これまでのやり方では通用しない――そう強く感じるようになりました。
料理人としての修行は積んできましたが、経営についてはまだまだ手探り状態でした。特に「情報発信」には強い苦手意識があり、「料理は出来立てが一番。写真を撮る時間があるなら、早く食べてほしい」という職人気質が、SNSやデジタルツールを遠ざけていました。
このままでは、私のこだわりも、尾鷲の素晴らしい食材の魅力も、店の外には伝わらない。その危機感から、みえビズに相談しました。
どのような助言を受けましたか?

コーディネーターや専門家との対話を通じて指摘されたのは、「魅力はあるのに、十分に伝えられていない」という点でした。
仕込みの丁寧さや素材へのこだわりといった、私たちにとっては当たり前のことこそが、まだ見ぬお客様にとっては大きな価値になる――それを発信していないのは非常にもったいない、という助言でした。
具体的には、次のような提案を受けました。
提案1:ターゲットを分けた商品づくり
地元住民には企業向けの宴会プラン、観光客には「板前体験」や希少な「美熊野牛(みくまのぎゅう)」など、ニーズに応じた訴求を明確にすること。
提案2:アナログとデジタルの併用による情報発信
SNSだけに頼らず、近隣市町へのフリーペーパー、新聞広告、チラシなど、取り組みやすい方法を組み合わせること。
提案3:感覚に頼らない収支管理
日次で収支を把握し、どのメニューが利益を生んでいるのかを数字で確認すること。
改善提案を受けて何をしましたか?

まずは「やれることから、泥臭く」取り組むことにしました。最初に注力したのは、地元向けの宴会需要の掘り起こしです。
新たに宴会プランを作成し、その内容を記したチラシを配布しました。地域の方々と直接言葉を交わす中で、これまで見えていなかったニーズを実感することができました。
さらに、ターゲットを広域に広げるため、外国人観光客へのアプローチも強化しました。天然魚や美熊野牛の魅力を伝え、単に食事をするだけでなく、板前の技を間近で見られる「体験型グルメ」としての価値を打ち出しました。
また、経営の足腰を強くするため、日次収支の記録も始めました。毎晩、営業後に売上とコストを整理するのは正直大変でしたが、数字が可視化されたことで、「この食材はもっと活かせる」「この価格設定は適切か」といった視点で、メニューを見直せるようになりました。
支援を受けてどのように変わりましたか?

改革を始めてから、目に見える成果が次々と現れました。まず、地元向けの宴会予約が前年比で約10%増加しました。チラシを手にした地元の会社員の方々が、「こんなに本格的な料理を、この予算で食べられるとは知らなかった」と来店してくださるようになったのです。
また、これまでほとんど縁のなかった外国人観光客の来店も増えました。十分なおもてなしができているか不安もありますが、「美味しい」と笑顔で食事を楽しまれる姿を見て、技術は言葉の壁を超えるのだと、深い手応えを感じました。
以前は「宣伝など恥ずかしい。料理さえ作っていればいい」と考えるほど、職人気質が強かった私ですが、思い切って情報発信に取り組んだことで、お客様との対話が増え、自分のこだわりが伝わる喜びを改めて実感できるようになりました。
情報発信とは、単なる集客ではなく、お客様への「おもてなし」の始まりだったのです。
これからも、この地で獲れる最高の食材と、磨き続けてきた技術で、一人でも多くのお客様に「食の楽しさ」を伝えていきたいと思います。
行動計画
個別マーケティング戦略
プロモーション- ランチ需要の取り組み①観光客向け御前+体験グルメ(おまかせ割烹コース+地酒ペアリング体験)②地元ビジネス層向け日替わり定食
- 地元食材の強調(看板メニュー化)、尾鷲の魚介類(ブリ、カツオ、アジ、伊勢エビなど)、美熊野牛
- 集客戦略(季節ごとの「旬の会席コース」や「地酒フェア」でリピート促進)
具体的な販売促進活動
プロモーション- 観光客向け販促活動(尾鷲駅、観光案内所、ホテル旅館、道の駅、コンビニとの提携チラシ配布、Googleマップ、Tripadvisorで情報発信)
- 地元客向け販促活動(手書き季節メニューやおすすめPOPの設置、企業向け宴会プラン案内)














