三重県津市で、明治35年(1902年)の創業以来、120年以上の歴史を紡いできた「パティスリーナカジマヤ」。地域で長く親しまれてきた一方で、時代の変化という荒波が押し寄せていました。周辺人口の変容や主要客層の高齢化。老舗の誇りを守りつつ、いかにして現代の顧客に選ばれる店へと脱皮するか。5代目が抱いた危機感と、そこから始まった経営改革の軌跡を追います。
どのような相談をしましたか?

5代目のパティシエとして店を継ぎ、平飼い有精卵や北海道産生クリームといった厳選素材を使い、真摯にお菓子作りを続けてきました。しかし、経営者としての私は、心のどこかで常に正体のわからない焦りを抱えていました。
店舗に足を運んでくださるのは地元の高齢者層が中心で、客層の高齢化が顕著に進んでいたからです。周辺の人口動態が変化する中、伝統を大切にしながらも今の時代に合わせて変革していかなければ、将来的に行き詰まってしまうという強い不安がありました。
次世代を担う若者やファミリー層を呼び込もうと、自分なりに新商品を考えたり情報発信を試したりと、これまでも必死に試行錯誤を重ねてきました。しかし、新しいことに取り組もうとするほど、「自分たちはどこを目指し、誰を一番大切にしたいのか」という経営の軸が次第にブレてしまい、答えの出ない迷路に迷い込んでいました。
素材へのこだわりや技術には自信がありましたが、それをどうすれば「次の世代のお客様」に届けられるのか、店舗への集客をどう強化すべきか。自社だけでは限界を感じ、専門家の支援を受けることにしました。
どのような助言を受けましたか?

まず行ったのは、現状の整理でした。対話を重ねる中で、私が模索してきた「ファミリー層をターゲットにする方向性」は間違っていないと確認でき、背中を押してもらえました。
一方で、印象に残る指摘も受けました。「美味しいものをたくさん届けたい」という思いから、品揃えの豊富さこそが誠実さだと考え、技術を磨きながら多種多様な商品を揃えてきましたが、その想いをそのまま売り場に反映した結果、お客様にとっては「どれを選べばよいのかわからない」状態を生んでしまっていたのではないか、という助言です。
こうした議論を重ねる中で、次のような具体的な提案をいただきました。
提案1:ターゲットを「ファミリー層」に再設定し、戦略的なプロモーションを展開すること
提案2:お客様が迷わず選べるよう、人気順位やパティシエのおすすめを明示した売り場作りを行うこと
提案3:年中行事だけでなく、手土産や帰省用といった日常の「ギフト需要」を掘り起こす商品構成を検討すること
これらの助言を通じて、職人目線でのこだわりを大切にしながらも、「お客様目線」で伝え方を工夫することの重要性を学びました。
改善提案を受けて何をしましたか?

改善提案を受けて最初に取り組んだのは、長年の慣習を見直し、お客様にとって心地よい「売り場の見える化」を徹底することでした。商品のこだわりを伝えるPOPを一つひとつ手作りで設置し、「当店人気No.1」や「パティシエのおすすめ」といったメッセージを明示することで、直感的に商品を選べる売り場づくりを進めました。
また、ファミリー層との接点を強化する具体策として、お子様向けの「イラストケーキ」の制作にも、これまで以上に力を入れました。キャラクターや似顔絵のデコレーションは、家族の大切な記念日を彩る特別なケーキとして強い価値があると考えたからです。お客様の要望に丁寧に寄り添いながら一つひとつ作り上げることで、「ナカジマヤなら特別なケーキを任せられる」という信頼を少しずつ積み重ねていきました。
支援を受けてどのように変わりましたか?

今回の支援を通じて、私自身の「経営者としての視座」が広がったように感じます。以前は、職人として「美味しいお菓子をいかに作り、届けるか」という、作り手の視点で考える比重が大きかったのかもしれません。
しかし今は、その情熱を保ちながらも、一歩引いて「お客様の目線に立ち、どうすれば喜んでいただけるか」という商売の原点に、より深く、常に立ち返れるようになりました。イラストケーキを受け取ったお客様の喜ぶ様子を見るたびに、私自身も大きな喜びを感じます。
「お客様目線」という基本を徹底したことで、これまで点だった個々の取り組みが線としてつながり、お店全体に新しい活気が戻ってきました。単にお菓子を買いに来る場所を超えて、「来て、体験して、楽しめる。お菓子のテーマパークのようなお店」にしたいと思い、日々取り組んでいます。
行動計画
コンセプトの設定
プロモーション- コンセプトシートを作成、コンセプトに沿ったブレのない施策を設けて実行する
年間スケジュールと各月の販促計画の策定による効率的・効果的な事業展開の 実施
- 1年間の企画を見える化し、目標を設定してその達成に向けた取組内容を具体化
- シーズンや季節、旬、歳時記、イベントをおさえ、無理のない取り組みをする。販促カレンダーを活用したメニューやサービス、イベントの開発
店内プロモーション(レイアウト、POP、プライスカード)
- 斜面冷蔵ケース内のレイアウトについて、商品選定と価値が伝わるPOPの活用
- 常温棚のレイアウトについて、ギフトの需要は中元と歳暮、手土産、帰省土産の用途があり、それぞれのプライスラインで商品開発を行う
- ブランド毎にプライスカードの雛形を作成、管理を行う。また定期的にプライスカードの差し替えを実施する

















