昭和36年の設立以来、四日市市を拠点に「音楽を通じた豊かな体験」を提供し続けてきた株式会社第一楽器。ピアノや管楽器の販売にとどまらず、地域の子どもたちにとって、学校や家庭では得られない感動を共有する場として、長年親しまれてきました。しかし、急速に進む少子高齢化は、子どもを主な顧客とする同社の経営環境に、次第に影を落とし始めていました。
「このままではいけない」という強い危機感を抱き、みえビズの専門家に相談しながら、売上改善に向けた取り組みを進めていくことにしました。
相談をしたキッカケや背景を教えてください。

音楽教育の現場に長年携わる中で、私が最も強く感じていたのは、「少子高齢化」という避けられない波への危機感でした。かつては街中に子どもの声があふれ、教室も活気に満ちていました。しかし、年を追うごとに子どもの数は減少し、これまでのビジネスモデルを漫然と続けていては、地域の文化拠点を守り抜くことはできないと痛感していました。
以前から「大人向けの市場を本格的に開拓しなければならない」と考え、いくつかの取り組みも行ってきました。しかし、手探りの状態が続き、「本当にこの方向で良いのか」という迷いが常につきまとっていました。アイデア自体は数多くあったものの、それらが点在したままで、どこに経営資源を集中すべきか、優先順位をつけられずにいました。
経営者として現状を打破したいという思いが強まる一方で、自社だけで答えを見つけ出すことに限界を感じ、第三者の視点から助言を受けたいと考え、みえビズに相談しました。
どのような助言を受けましたか?

専門家の方々と対話を重ねる中で、まず驚かされたのは、私たちが当たり前だと思っていた「強み」の価値を再認識させられたことでした。充実した施設、経験豊富な講師陣、そして長年培ってきたレッスンノウハウ。これらは他社が容易に真似できるものではない、かけがえのない財産だと指摘されました。その上で、散らばっていた私のアイデアを整理し、以下の具体的な提案をいただきました。
提案1:数あるアイデアの優先順位を整理し、リソースを集中させること。
提案2:人生100年時代を見据え、シニア世代や子育てを終えた保護者層に対し「生涯学習」としての音楽を再定義すること。
提案3:ターゲットを明確にセグメントし、それぞれのニーズに合致した独自のレッスンプログラムを開発すること。
特に心に響いたのは、「生涯学習」というキーワードです。単に「大人も楽しめます」と謳うのではなく、人生の豊かさを彩るための学びとして、どう興味を持ってもらうか。そのためのアプローチを徹底的に深掘りする必要があると教えられました。当社のポテンシャルを信じ、プロの視点から背中を押してくれる言葉は、大きな支えとなりました。
改善提案を受けて何をしましたか?

私たちはまず、当社の核となる「YAMAHAMUSICSCHOOL」を基軸に、保護者やシニア層へ音楽との接点を作る方針を固めました。これまでのように「大人向け」と一括りにするのではなく、顧客ターゲットを詳細に分析し、細分化することから始めました。
具体的には、子どもの頃にピアノを習っていた再開層の保護者には「もう一度憧れの曲を弾く喜び」を、楽器に触れたことがない未経験のシニア層には「指先を使う健康習慣と新しいコミュニティ」を提案するなど、ターゲットごとに刺さるメッセージとプログラムを練り上げました。レベル分けも細かく設定し、誰でも気軽に始められるよう「レッスンの敷居を下げること」を意識して、短期間で成果を実感できるような独自のカリキュラムも考案しました。
この過程で大切にしたのは、従業員との対話です。私一人の判断ではなく、現場で生徒と接する講師やスタッフと一緒に、「どんなプログラムなら喜んでもらえるか」を議論しました。具体的なターゲット像を共有することで、「それならこんな工夫ができる」と前向きな意見をくれるようになりました。
支援を受けてどのように変わりましたか?

支援を受けて実感したのは、「顧客視点で価値を再定義すること」の重要性です。新しいサービスを企画する際、以前にも増して顧客のニーズを深く考えるようになりました。
その結果、シニア層や保護者層の入会が徐々に増え、教室には新たな活気が生まれています。何より大きな変化は、私自身が迷いから解放され、自信を持って経営の舵を取れるようになったこと、そして従業員が主体的に考え、動いてくれるようになったことです。
当社4階にはコンサートホールがあります。音楽の楽しさをたくさんの方に伝えて、さらに多くの世代が音楽で集う「地域の文化拠点」として進化させていきたいと考えています。
もし今、環境の変化に悩み、立ち止まっている経営者の方がいらっしゃるなら、ぜひ勇気を持って一歩を踏み出してみてください。自社の「当たり前」の中にある強みを見つめ直し、専門家の知恵を借りることで、新たな道が開けるかもしれません。
行動計画
大人向け市場の獲得・平日稼働率向上に向けた商品開発
新規顧客の獲得・販路拡大- 市場拡大を見込むことができる大人向け市場をターゲットにした商品の開発を行い、新規顧客の獲得及び既存顧客からの継続受講の促進を図る
客数・客単価向上のための情報発信
プロモーション- 既存顧客を対象としたオフラインでの取組(声掛け・チラシ配布等)の徹底及び見込客を対象としたオンラインでの取組(WEB活用)により、客単価・客数の向上を図る。


















